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多くの人に伝えたい生演奏の魅力
― “会いに来るバイオリニスト”が目指す場所 ―

バイオリニスト/Ginza el Majesta(ギンザ エルマジェスタ) 代表 阿部志織

幼いころから“表現すること”が大好きだったと語るバイオリニストの阿部志織さん。生演奏をもっと身近に感じてほしいという願いから、斬新なバイオリン教室を開かれています。そんな阿部さんのアルバイト体験や理想と考える音楽の在り方などについて、インタビューしてきました。

阿部志織(あべ しおり)
会いに来るバイオリニスト/Ginza el Majesta(ギンザ エルマジェスタ) 代表

東京都出身。10歳のころ、学校のオーケストラ部に入部したのをきっかけにバイオリンを始める。25歳で中高年の男性をメインとしたバイオリン教室「Ginza el Majesta」を設立。「会いに来るバイオリニスト」として、バイオリンを身近に感じてもらうための取り組みを積極的に行う。「ミス・ワールド2014」日本代表ファイナリスト。

休日返上で練習に明け暮れた学生時代

阿部志織-会いにくるバイオリニスト

―バイオリンは何歳くらいから始められたんですか?

  ほかのバイオリニストの方と比べると遅いんですけど、10歳のときに始めました。転校した先の小学校にオーケストラ部があって、親の勧めでそこに入るかたちで。当時、私は打楽器に憧れていて、バイオリンには興味がなかったんです。でも、顧問の先生から「あなたはこれをやってみなさい」と渡されたのがバイオリン。それが私のバイオリン人生のスタートです。
  言われるままに始めたものの、所属したオーケストラ部は全国大会に出場するようなレベルだったので、練習は過酷でした。毎日、朝晩の練習は当たり前で、土日も休まず練習。“世界一忙しい小学生”なんて言われるほどでした(笑)。中学生でも引き続きオーケストラ部に入ったのですが、それにプラスして千葉県のオーケストラに入団したんです。なので、中学生のときは平日の朝練・放課後練に加え、土日の午前中が部活、土日の午後から県のオーケストラの練習という感じだったので、まさにバイオリン漬けの日々でした。

―バイオリンに興味がないところからのスタートだったのに、どうしてそんなに頑張ることができたのでしょうか?

  オーケストラ部だったので、一緒に演奏する仲間がいたことが大きかったと思います。それと、もともとステージに立つことが好きだったというのも続けられた理由でしょうか。もし、バイオリンと出会わなければ、歌手を目指したかもしれない。演劇に興味を持ったかもしれない。たまたま小学生のときにバイオリンに出会えたことで、自分を表現する手段のひとつとして、バイオリンがあるという感じですね。でも、さすがに中学生時代のバイオリン漬けの毎日は堪えて、高校はあえてオーケストラ部のない学校を選びました。それで、ソフトボール部に入ったんです。

一度離れることで得たバイオリン演奏の進化

―ソフトボール部!? 意外です。県のオーケストラも辞めてしまったんですか?

  オーケストラは続けていました。だから、土日は午前中にソフトボールの練習試合をして、泥まみれのユニフォームを着たまま楽器を持って、午後からオーケストラの練習に行きましたよ(笑)。でも、やっぱり無理が出てきてしまって、ソフトボールは1年しか続けられなかったんです。ずっと音楽漬けの生活でしたが、スポーツをやってみたことで、改めて音楽の楽しさに気づけたように思います。
  その後、高校2年生からは軽音楽部に入ったんです。そこでロックバンドを組んでドラムを担当したんですよ。小学校のころ憧れていた打楽器にここで挑戦できることになりました。ドラムをやってよかったと思ったのが、オーケストラのベースラインであるチェロやコントラバスの音がよく聞こえるようになったこと。バイオリンだけをやっていたころより周りの音を意識しながら演奏できるようになったんです。ほかのロックバンドの方たちとの人脈もできて、のちに、バンド演奏にバイオリンとしてサポートに加わるという機会もいただけました。

―オーケストラ以外にも演奏の場を広げていったんですね。

  はい。バンド演奏にサポートとして入ったのは大学生のときなんですけど、高校3年生の夏休みにもあるチャレンジをしたんです。バイオリンではずっとクラシックを演奏していたので、別ジャンルの音楽をバイオリンで奏でてみたいなと思っていて。そこで、同じオーケストラにいた友人と、千葉県津田沼駅前で路上ライブを開催したんです。そこで演奏したのはポップス。制服を着た女子高生がバイオリンでポップスを弾く…この姿はみなさんの目に新鮮だったのでしょうね。駅前が観衆でいっぱいになったんですよ。

アナウンサーを目指してバイトに励んだ日々

阿部志織-野外立ち

―現在の独自の演奏スタイルにもつながっているような気がしますね。大学時代はどのように過ごされたんですか?

  私は音大には進学しなかったんです。いつも進路を決めるタイミングで「何がやりたいか」っていうのを自問自答するんですけど、高3のときはアナウンサーになりたくて。小学生のときの夢でもあったんですけどね。音大ではない大学に進学しながら、いろいろなアルバイトを経験しました。長く続けていたバイトは、野球場でのビール売り。あとは、テレビ番組のエキストラや地域限定のFM局でラジオのパーソナリティーのバイトもしました。
  パーソナリティーのアルバイトでは、時間の枠を与えられて、そこで何を放送するかを自分で決めなければならなかったんです。ネタを探して取材に行って、原稿を書いて読むという一連の流れをひとりでやるので大変でしたが、アナウンサーを目指していた私にはとても有意義なものでした。

―就職活動ではテレビ局を受けたということですよね?

  そうです。ここで私の人生グラフがガクンとへこむんですよ。結果、採用試験を受けたテレビ局はすべて落ちてしまいました…。思い知らされましたね、人生そんなに甘くないぞと。アナウンサー志望の場合、就職活動は大学3年生の夏から始まるので、それに備えて3年生の前期で単位を全部取り終えていたんです。そのため、4年生は授業がない状態だったので、司会やパーソナリティーのバイト経験を活かして、自らイベント会社に行って営業活動をしました。
  司会のお仕事って、しゃべる技術のほかにイベント会社の求めるキャラクターも大きく影響するので、なかなか決まらなくて…。そんなとき、履歴書の特技の欄に書いた「バイオリン」に目をつけてくださった方がいて、そこから演奏イベントに呼んでいただくことが増えたんですよ。本心はやっぱり司会をやりたかったですが、ステージに立てることはうれしかったです。司会をやりながら、演奏者としてゲスト出演するなんていうイベントもありましたよ(笑)。

―イベントに出る機会が増えたのを機に、またバイオリンを本格的に?

  はい、そうですね。司会業を生業にすることは難しくなってしまったんですが、それまで学んできたことはすべて意味があったんだと思えたんです。というのも、バイオリニストをはじめ、演奏家の方はしゃべりが苦手という人が少なくないんです。イベントなどで演奏する際、演奏の合間には司会も必要になります。私の場合は、学生時代の司会やパーソナリティーのアルバイト経験が役に立ち、演奏の合間の司会で会場を湧かせることもしばしば。その司会が好評でお仕事を頂ける機会も増えました。更に、コンサートでの司会のオファーを頂ける機会もどんどん増えて行きました。司会の技術よりも、音楽の知識が備わっている人のほうがいいという演奏家の希望と私の持っている特技が合致したのです。今度は逆に演奏者として依頼を受けたのに、司会もこなしたコンサートもあります。
  意味があったといえば、もうひとつアルバイトの経験が活きたことがあります。ビール売りのバイトで得た特技なんですが、私はライブにきてくださるお客様の顔をすぐに覚えられるんですよ。ビールを売っているとき、お客様から「7回の裏が終わったら回ってきてね」というようなリクエストされることがあるんです。その場合、場所と声を掛けてくださった方の顔を覚えなければならないですよね? 4年間続けたバイトなので、覚えることが当たり前になっていたんですが、それが意外なところで役立っています(笑)。

仕事がゼロになった窮地から独立を決意するまで

阿部志織-語り

―バイオリンと司会のお仕事が、補完し合っているというか…すごく順調な流れですね。

  そうなんですよ。アナウンサーの道を諦めて、バイオリニストとしてときどき司会のお仕事をさせてもらいながら順調にきたんですけど…25歳のときに東日本大震災が起こりました。世の中が自粛ムードになりましたよね。そこで仕事がゼロになったんです…。年内のものすべて、いっぱいだったクリスマスライブのスケジュールも全部白紙。「どうしよう…」と思いながら自宅にいるときに、父親が家でゴロゴロしているのを見て、ひらめきました。
  父親世代の人って、若いころにバンドを組んでいた人も結構いるんですよね。そういう人たちが定年を迎えたとき、また音楽をやりたいって思うんじゃないかって。その人たちに、私はバイオリンなら教えてあげられるって思ったんです。バイオリンが弾ける大人の男性って素敵ですよね。それで、2012年1月にバイオリン教室を立ち上げることを決意し、5月に「Ginza el Majesta (ギンザ エルマジェスタ)」をオープンしました。私は誕生日が6月なんですけど、誕生日がくると26歳になる年だったんですね。だから、どうしても25歳のうちに始めるんだ!と決めて、急いで準備しました。25歳の方が若いのに頑張ってるって感じしませんか?(笑)。

―バイオリン教室は“かっこいいオヤジになる”がコンセプトだとお聞きしました。どんな風に指導されるんですか?

  私は音大に行っていないので、音大受験を目指すようなお子様向けに教えることができなくて。大人の場合、「かっこよく弾きたい」「この曲だけを弾けるようになりたい」というご要望が多いので、10回の講座を受けていただくことでご希望の曲が弾けるようになるプログラムにしています。忘年会でバイオリンを披露したいという方や結婚記念日に奥様へのプレゼントとして演奏したいという方がレッスンにお越しくださっていますよ。きっと仕事一本の人生を送ってきたという方も多いと思うんですよね。50代~60代の男性は。だから、第二の人生としてバイオリン教室で新たなコミュニティが生まれてくれたらという願いもあります。

バイオリンの存在をもっと身近に感じてほしい

阿部志織-バイオリン

―楽器…しかもバイオリンって習うにはかなり敷居が高いイメージがあるんですけど。

  やはりそうですよね。みなさんが持つバイオリンへのイメージを変えたいという気持ちも教室をオープンした理由のひとつです。日本はとくに生演奏に対して敷居が高いと感じる方がいらっしゃると思います。音楽が嫌いという人はそんなにいないと思うんですが、オーケストラのチケットを買って、ホールに聴きに行こうという人がたくさんいるかといえば、そうではないですよね。そこを覆したいんです。生演奏はもっと身近なものであってほしいと思っていて、それを叶えるための活動にも力を入れたいんですよね。

―そういった想いが、活動のコンセプトにも込められているんでしょうか?

  はい、つながっています。チケットを買ってまでは聴きに行かないという人には、私が会いに行きます!“会いに来るバイオリニスト”ですから。パーティーはもちろん、オフィスビルのエントランスでランチタイムにミニコンサートをすることもありますし、田んぼで演奏したこともありますよ(笑)。呼んでいただければどこへでも行きます!

―今年の夏には「ミス・ワールドジャパン2014」のファイナリストに選出されましたよね? コンテストにはどういった経緯で出場されたんですか?

  「ミス・ワールド」に出ようと決めたのも、音楽の素晴らしさをもっと広めたいという想いからでした。「ミス・ワールド」は“目的のある美”というテーマで1951年から開催されている、歴史あるミスコンテストです。私はこれまで被災地などを中心に、チャリティー演奏会などを行ってきましたが、まだまだ規模も小さく、影響力が少ないと感じていました。だから「ミス・ワールド」に出場することで、さらに多くの人に自分の活動をお伝えできたらと思ったんです。ファイナリストに選ばれたことは大きな自信になりました。ほかの出場者の方たちの活動に刺激を受け、物事の考え方の幅も広がりましたね。

―今後、考えられているビジョンはありますか?

  音楽家の演奏の場をもっと増やし、生演奏あふれる日本を創って行きたいと思っています。そのためにこれまでの活動と並行して、裏方の活動にも力を入れていきたいと考えています。もっとも尽力したいのが音楽家の雇用の仕組みを生み出すこと。音楽家には就職先に困っている人が少なくありません。音大は技術を教えてくれても、音楽でどうやって食べていくかというところまでは教えてくれないのでは?と感じています。せっかく技術を持った人が世間に埋もれてしまうのは、本当にもったいないことですよね。そういった方々にご協力できるよう、ゆくゆくはプロデューサーやマネージャーといった立場を目指しているんです。
  雇用に関してはやはり女性に特化したいと考えています。結婚や出産、子育てというライフステージによってどんな働き方が可能かを考えながら出来たら。自分がステージに立つことが楽しいと思っていた時期もありましたが、これからは、よりたくさんの音楽家たちがステージに立てる機会を増やし、そこで輝けるようプロデュースしていきたいと思います。秋元康さんのようなプロデュース力をつけることが目標です(笑)。

  音楽家の演奏の場が増え、それによって生演奏を身近に感じる人が増え、最終的に日本中に生演奏があふれると信じています。街を歩いていると、どこからかバイオリンの音色が聞こえてくる…そんな世の中になったら最高じゃないですか!


[取材/編集/撮影] 鈴木淳也、白井美紗 [編集・執筆協力] 渡辺千恵

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