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狙うは世界のC2C市場
―メルカリの大いなる挑戦―

株式会社メルカリ 山田進太郎

スマートフォン向けフリマアプリ『メルカリ』の企画、開発、運営を行う株式会社メルカリの代表を務める山田進太郎氏。『映画生活』『まちつく』『フォト蔵』などのヒットコンテンツを生み出し、C2Cアプリの制作に挑んだその真意とは? アメリカ市場を視野にいれたメルカリの展望を一挙大公開!

山田 進太郎(やまだ しんたろう)
株式会社メルカリ 代表取締役

1977年生まれ、愛知県出身。早稲田大学在学時にインターンとして楽天株式会社での新規コンテンツ『楽天オークション』の立ち上げに参加。卒業後はフリーでインターネットビジネスの仕事を請けながら経験を積み、2004年に単身渡米。2005年に帰国し株式会社ウノウを設立。2010年にウノウをZyngaに売却、2012年Zynga Japan退社。2013年2月に株式会社メルカリを創業し現在に至る。

※本文内の対象者の役職はすべて取材当時のものとなります。

2017.10.31 update/文章の読みやすさを改善しました。

メルカリの事業について

メルカリのサービス画像

―メルカリの事業について教えて下さい。

現在、メルカリではスマートフォン向けのフリマアプリ『メルカリ』の企画・開発・運営を行っています。スマートフォンのカメラを使って2~3分程度で簡単に出品ができるシステムです。

また今までのオークションサイトとは違い、欲しい商品を見つけたらすぐに購入できるのも魅力の1つです。基本的には個人間取引にはなりますが、購入する側から見るとクレジットカードやコンビニ決済などの決済機能を備えており、一般の通販サイトと遜色ないシステムなので、とても手軽に買い物ができます。

お客様から特に好評いただいているのは、購入者が商品を受け取り、購入者と出品者双方が評価を終えた後に支払いが行われることです。このような流れにすることでトラブルが起こりにくい形になっています。

App Store BEST of 2013「今年のアプリ/ショッピングの新しいかたち」やGoogle Play Best of 2013「ベストショッピングアプリ」といった賞を受賞しており、新しい形のショッピングアプリとして話題を集めています。

メルカリ山田進太郎氏の学生時代

―山田さんは学生時代、仕事についてどのように考えていましたか?

10代のころは家庭教師のアルバイトをしていました。その後はコンビニのアルバイトも経験しました。

しかし、当時は社会の仕組みをちゃんと理解できておらず、時給重視で決めていました。仕事はお金を稼ぐ手段でしかなかったからです。

そんな自分の仕事観が大きく変わったきっかけが、大学3年生の時に行ったインターンでした。『みんなの就職』というサービスを作った伊藤将雄さんから紹介を受け、夏休みを使って株式会社日経BP社でインターンとして働き始めたのです。すると、お金を稼ぐ手段でしかなかった仕事への意識は180度変わりました。

インターンでは現『ITpro』と言う新しいサイトの立ち上げに関わっていたこともあり、本当に何もない状態から事業を立ち上げていくのを見ることができました。

日経BP各媒体から記事を集め、足りない分は自分達で作成をする。さらに、マイクロソフトやインテルなどに広告を出稿してもらい収益を得る……与えられた仕事をこなしていればよかったアルバイトとは全く違い、何もかもが新鮮でした。

「そうか、ビジネスってこうやって作られていくんだな」そう身を持って学ぶことができたのです。

―その後、創業間もない楽天から内定をいただきインターンとして業務に携わったとうかがいました。

そうですね。以前からインターネットビジネスをやりたいという想いは持っていましたが、当時入りたいと思っていた株式会社オン・ザ・エッヂ(ライブドアの前身)では文系の学生を対象にした採用試験は行っておらず、試験を受けることすらできなかったのです。

どうしようかなぁ……と悩んでいた大学4年のころ、日経BPでのインターンを紹介していただいた伊藤将雄さんに今後について相談をしました。すると、ある会社を紹介されました。それが現在の楽天です。

当時の社員数は20人くらい、まだまだ駆け出しのベンチャー企業で、楽天というサービス自体も世間の認知度は低い状態でした。しかし、私は社長の三木谷さんの上昇意欲あふれる考え方に大変惹かれたのを覚えています。

すでにインターネットのサイトとしてはYahoo!JAPANが圧倒的な知名度を誇っていましたが、三木谷社長曰く「楽天に来る人は何かを買いに来ている。だから、楽天の1PVとYahoo!JAPANの1PVは価値が違うんだ!」と、言っていたのがとても印象的でした。「なるほど」と思ったのと同時に「この会社、すごくおもしろい!」と、そう思ったのです。

そして、その場で内定をいただき翌日には内定者インターンという形ですぐに仕事を始めました。

当時は就職先にベンチャー企業を選ぶ学生はほとんどいなかったので、「何でそんな小さな会社へいくんだ?」と、大学の友人が一様に首をかしげていたことを今でも覚えています。

「新しいサービスを作りたい」。そんな想いを持っていた私が配属されたのは、楽天オークションの立ち上げです。当時は個人間取引は世間では全く浸透していませんでしたし、ましてやインターネットを通じて個人間で売買を行うなんて想像もできませんでした。

しかし、アメリカではすでにeBayでネットオークションがブームとなっていたので、それならば日本でも、という感じで楽天内の新規事業としてリリースされました。

結果としては、楽天オークションの10日後に開設したYahoo!のオークションサイト「ヤフオク」に大きく溝を開けられてしまいました。苦い思い出ですね。

「就職」でなく「起業」を選んだ人生の転機

オフィスで腕を組みかっこよく映る山田社長

―結局、楽天には就職しなかったそうですが、どうしてですか?

半年間、楽天でインターンさせていただきましたが、そこから導き出した結論は「僕自身の力で1から作ってみよう!」という自ら道を切り開いてゆく生き方でした。会社という組織に属して働くうちに「もっと自分の思うように業務をしたい!」と言う想いが募っていったんです。

「じゃあ、就職という道は僕の理想とは違うんじゃないか……?」と思い至り、内定を辞退しフリーで仕事を始めたのです。

その後、約4年間は、起業というよりはフリーでさまざまな仕事を受けていました。主にインターネット・サービスの構築を僕が請け負ってきて、エンジニアの方や、ほかのフリーランスの方と一緒に仕事をするスタイルです。

2000年代初めはまだまだインターネット黎明期だったこともあり、仕事は無限にありました。そのため、おもしろい仕事を数多く経験することができましたね。

あれもこれも全部やりたい!-興味のおもむくまま1年間の渡米

―しかし2004年に突如、渡米されますね。これはどのような意図があったのですか?

フリーでの仕事はとても楽しかったのですが、当時はほかにもやりたいこと、やってみたいことが3つありました。

1つ目は、アメリカに住んで英語を話せるようになりたかったこと。2つ目は、シリコンバレーでインターネットビジネスをやってみたかったこと。3つ目は、インターネットとは全く関係のないビジネス、たとえばレストランや不動産などもやってみたいと思っていたことです。

大学を卒業後、ずっとフリーで仕事をしてきたのも、これらの想いを捨てきれなかったことが理由です。無責任に社員を雇うのはよくないので。

しかし、やりたいことをそのまま放置すれば、未知の世界への憧れがずっと残ってしまうと思いました。そこで、「とりあえず全部やってみよう!」と、動き始めたのです。

アメリカに1年間住みましたし、シリコンバレーでのインターネットビジネスについてもアメリカで生活をしながらスタートさせました。アメリカの食事があまり合わなかったので、「だったら、自分が飲食店を開業しよう!」と思い、現地で飲食店を経営していた日本人と一緒に飲食店開業に向けて物件探しもしていました。3つともかなり具体的に動きましたね。

―そうしてアメリカで得たものは何だったのでしょうか?

「自分はインターネットビジネスがすごく好きなんだな」と気がつくことができました。それを知ることができたのは、僕にとって大きかったですね。

長年「やりたい!」と思っていたこれらのことを実際に経験したことで、自分が本当にやりたいことの本質が見えました。

まず1つ目の、アメリカに住みたかったという望みは、住むことが目的だったのではなく、 “英語を習得して世界で勝負したい” ということだったと分かりました。

2つ目のシリコンバレーでのインターネットビジネスは、 “シリコンバレーにこだわる必要はない” と気づかされました。アメリカでも日本でも、いいサービスやコンテンツをつくることはできる。それがインターネットの魅力だと、再確認することができたのです。

そして最も決定的だったのが、3つ目の他業種での仕事です。レストランを開業しようと動き始めたある時、「レストランはどんなに客入りがよくてもひと月に数千人しかサービスを提供できないんだな……」と気づきました。当時、僕が運営していた『映画生活』というサイトは、月間にして100万人の訪問者がいたので、それと比較をするととても少ない人数に思えたのです。

1回使ったことがある、という程度でもいいから、 “より多くの人に使ってもらえるサービスを作りたい!” と、強く思いました。

ほかの仕事や興味のあったことを全てやってみたからこそ、本当に自分がやりたいことが目に見えるようになったのでしょう。。

「もともとやっていたことが自分のやりたいことだったなんてラッキーだな」という結論に至ったところで、アメリカを後にしたのです。

メガヒットコンテンツ『まちつく!』ができるまで

―帰国後、ウノウを起業し、話題のコンテンツを次々とつくられた山田社長ですが、当時の秘話などがありましたら教えて下さい。

そうですね。2005年にウノウを設立しましたが、実はなかなかホームランが出なくて……3年弱ずっと、試行錯誤を繰り返していました。

写真共有サイト『フォト蔵』や映画情報サイト『映画生活』など、話題を呼んだサービスもありますが、ホームラン級のメガヒットとまではいきませんでした。

とはいえ、アイディアだけは毎日考えてはいました。そのなかの1つが、 “モバイル×コンテンツ” のサービスです。

日本から世界に出て成功した事例は何かと考えた時、漫画やアニメといったコンテンツ系が多かったことに気づきました。そこで、日本人はコンテンツ作りに向いているんじゃないかと考えたのです。

そこでモバイルゲームの開発を始め、生まれたのが、ソーシャルゲーム『まちつく!』だったんです。

当時はソーシャルゲームという言葉がまだなく、コンテンツを通じて友達とやり取りができる無料のサービスを考えたのですが、これが当たりました。

2009年11月にはmixiアプリで『まちつく!mixi版』のサービスを開始し、会員数は500万人を越えました。月商1億円を超える月もあったほどです。

その後、アメリカのソーシャルゲーム大手のZyngaからウノウ買収の話をいただきまして、2010年の夏に売却をしました。

メルカリの今後の事業展開について

メルカリ出品中の商品画像

―メルカリを設立して約1年となります。今後、メルカリが目指すビジョンを教えて下さい。

どうしてウノウの売却を決めたのかと言うと、「世界で勝負がしたかったから」という一言に尽きるんです。

当時世界に2億人以上のユーザーを抱えていたZyngaならば、自分でアメリカ市場に進出するよりも早く自分のサービスを世界に提供できると思いました。そんな、「アメリカ市場を狙っていきたい!」という想いは、今でも変わっていません。

ウノウがZynga Japanになって、僕は人生初のサラリーマンを経験しました。Zyngaという、シリコンバレーで最も勢いのある巨大な組織のなかでの仕事は、得るものが大きかったです。それに、たとえ会社に雇われている立場であっても、きちんと実力を出すことができたのは自信にも繋がりました。

しかし逆に、自分にとってデメリットもありました。何となく感覚的にうまくいきそうだからこうしたい、ということができず、思うように動けなかったんです。組織を動かすためには、どうしてもファクトを集めて説得しなければなりませんからね。そのために、チャンスを逃してしまったな……と思うことが何度もありました。

「すごいサービスを作りたければ、自分の感覚を信じて自分の責任でやるべきだ」と思い、2012年にZynga Japanを退社しました。

それからすぐに新たな会社起ち上げに向けて動いてもよかったのですが、一度始めてしまうと長期での休暇は取りにくいので「行きたいところを全て回ってから次のスタートを切ろう!」と思いまして。それが結局、世界一周旅行になっていましたね。

日本に帰国したのは2012年の10月です。そこから、新しいサービスについて考え始めました。

そこから出たアイデアのうち、5~6個をピックアップして精査しました。そのなかで最も世界で勝負ができるサービスだと思ったのが、C2C(一般消費者と一般消費者の間の取引)のアプリだったのです。

そこからラテン語で「商う」という意味を持つ “mercari” という単語を社名につけました。こうしてメルカリを創業し、およそ半年でアプリをリリースしたのです。

『メルカリ』をリリースしてから半年と少し経ちましたが、国内では順調に会員数を伸ばしていますし、多くの一般ユーザーから高い評価をいただいています。「誰でも使えるサービスにしたい」と、ユーザー目線で開発を進め、サービスを展開してきたことが功を奏したのだと感じています。

次に狙うのは、やはりアメリカ市場です。ローカルなサービスで終わらせないためにも、英語でのサービス展開は急務だと感じています。

アメリカにはC2Cアプリで覇権を握る企業がまだないので、「今ならいける!」と、社員一同息巻いているところです。

その第一歩として、アメリカに子会社を設立しました。米Rock Youの創業者だった石塚(メルカリ取締役)がシリコンバレーに赴任し、現在マーケティングやサポート体制を整えています。

サービスについては、現地でも概ね良いフィードバックをいただいていますので、早期にアプリをリリースできるよう、尽力していきたいと思っています。

人材についても石塚の人脈を通じ、優秀な人へコンタクトできていると思います。

メルカリの今後の採用

―今後、メルカリがさらに成長するために欲しい人材像を教えてください。

現在(2014年5月)の社員数は40人弱です。当社サービスは、開発が15人、カスタマーサポートが15人、その他が10人という割合です。C2Cの個人間取引とは言っても、大多数の取引は何の問題もなくスムーズに終わります。

しかし、母体が大きくなれば当然、多少のトラブルも起きてきます。「商品を送ってこない」「偽物が届いた」など、各種のトラブルに合わせて応対を行うカスタマーサポートの仕事量が増えていますから、このあたりの人材の強化も必要ですね。あとはやはりエンジニアなど、開発側の人材も補強していくと思います。

今や世界的に成功したGoogleやFacebookといったサービスは、運営当初は決して目新しいものではありませんでした。Googleは「最初の検索エンジン」ではないし、Facebookも「最初のソーシャルネットワークサービス」ではありません。でもそれぞれがここまで普及し定着したのも、サービスが安定して運用されていたこと、そして誰でも簡単に、楽しく使えるようなUI(ユーザーインターフェース)を意識したつくりになっていた点が大きな要因でしょう。メルカリもその点が必須になってくると思っています。

今後はそういった、ユーザーを強く意識した設計ができる人が欲しいと思っています。

あとは、これからアメリカや世界の市場に挑戦していく予定なので、その理念に賛同してくれる人が望ましいですね。

[取材/執筆/編集] 高橋秀明、白井美紗

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